企業のDX、AX(AIトランスフォーメーション)の取り組みを紹介していく本企画。
第一弾となるのは、多角的な営業・マーケティング支援を行うダイレクトヒューマンマーケティング様です。
その会社の一員として非常に密で多角的なご支援を行なっている一方で、少人数で数十社とお取引をしており、AIによる業務効率化は必須とのこと。具体的にどのような活用をされているかも含め、お聞きします。
事業内容と組織の現状について
――まずは、御社の現在の業種と事業内容について教えてください。
コーポレート・インナーブランディングの構築支援を中心に、企業の価値を社内外に浸透させるマーケティング施策を提供しています。主に中堅〜大企業を対象に、社内向けブランディング戦略、理念の言語化、組織活性施策などを包括的にサポートしています。
――なるほど、組織規模としてはどのような体制ですか?
現在は採用活動中のフェーズです。部門構成はまだ整備途上ですが、事業の性質上、今後も柔軟な構成で運営していく予定です。
社会・業界レベルでのAXについて
AIに対する認識と社会への影響
――AIが社会をどう変えていくかについて、どのようなイメージを持たれていますか?
業務の効率化を超えて、意思決定や創造性の拡張までAIが担う時代が近づいていると感じています。特に情報整理やナレッジ共有の面で、人間の限界を補完する存在になると考えています。
――そのように感じたきっかけは何かあったのでしょうか?
はい、人間の想像を超えてきたと感じた瞬間がありました。たとえば、企画提案の場面でChatGPTが提示するアイデアが、自分では思いつかなかったものだったりして、思考の補助というより“共創”に近い存在として驚かされました。
業界構造におけるAIの影響
――おっしゃる通りで、AIは今後仕事の仲間のような存在になっていくものと私たちも考えています。では、御社の業界では、AIはどのような変革をもたらすと考えていますか?
コンサルティングやブランディングの領域でも、ヒアリング内容の自動整理、インサイトの抽出、クリエイティブ案の生成支援など、AIの貢献余地は非常に大きいと思います。
――そのような変化が進むと、業界構造自体も変わっていくと感じますか?
はい。たとえば、企画提案の“たたき台”レベルであれば、すでにChatGPTで事足ります。これまではフリーランスの方が担っていたような単発的な提案業務は、今後どんどん置き換えられるのではないかと。デザインなど、感覚や経験が強く求められる領域は残るかもしれませんが、中間工程の多くは再定義されると見ています。
AIと人間の役割分担
――そのような「最初とりあえずAI」「80%はAIにやらせる」は、実際の業務活用の落とし所としても多いところです。では、人が間に入る必要があると感じるのは、どのような部分ですか?
「言われたことをそのままやるだけ」の役割であれば、人は必要ないと思います。一方で、プロジェクトマネジメント(PM)のように複雑な調整や人間関係の管理が必要な業務は、しばらく人間の役割であり続けるでしょう。
――PMの仕事もAIで効率化できる部分はあると思いますが、それでも人間ならではの部分が残ると?
そうですね。たとえば目標設定も、ChatGPTを使えば構造的な目標は作れる。ただ、チームの感情や背景を踏まえて「今この言葉が必要だ」と判断するような部分は、まだ人の領域です。
社内レベルでのAXについて
社内のAI導入とAXの可能性
――現在、社内ではどのようにAIを活用していますか?
主に企画・営業部門でChatGPTやNotionを活用しています。提案資料の構成づくりや、過去の事例検索に活用しており、資料作成時間が30〜40%短縮されました。結果として打合せの回数も減り、業務全体が効率化されています。
――導入時に苦労された点はありますか?
はい。最初は「AIに何ができるのか」が人によってバラバラに理解されていたことですね。また、情報漏洩や著作権への懸念から、使用に慎重な人も多く、全社導入には段階的なアプローチが必要でした。
ユニークな導入工夫と今後の事業展開
――導入にあたって、特に工夫された点やユニークな施策はありますか?
業務プロセスを細かく分解して「この工程はAIに任せられる」といった形でマッピングシートを作成し、社内に共有しました。属人化しやすい業務も構造化することで、AI活用のハードルを下げられたと感じています。
――今後、AIを軸とした事業展開も視野に入れていらっしゃいますか?
現在は顧客向けにAIを直接提供する事業はありませんが、今後はブランディング領域に特化したAIアシスタントの導入を検討しています。たとえば、企業理念の言語化支援をするAIツールなどですね。
AIで差別化するための視点
――AIを使ったサービスで「ただ使っている」に留まらず、どう差別化するかといった想定までありますか?
当社のサービスの核は、「人と組織の価値観」にあります。そのため、AIが出したアウトプットをどう読み解き、どう問いを立てるかという人間の思考プロセスこそが差別化ポイントです。AIのアウトプットの活かし方に、当社独自の人間ならではのクリエイティブが差別化ポイントになってくるかと思います。
まとめ
AIが“業務効率化”の道具から“共創のパートナー”へと進化していく中で、組織設計やブランド戦略も再定義が求められています。問いを立て、意味を読み解き、価値を紡ぐ——人間ならではの視点や感情といった部分が複雑に関係する領域だからこそ、人とAIの役割分担や、AIの与えている影響について非常に参考になる取材となりました。
インタビュアー
甲斐凜太郎:
株式会社sai X aid代表、東京大学工学部・工学系研究科にてデータサイエンスやAIの応用開発研究に従事。
強化学習・AIの説明性を専門とし、国際学会での発表経験等多数。
内閣府ムーンショット計画におけるAI研究開発、スタートアップやエンタメ業界におけるBizDev・業務効率化支援、松尾研発スタートアップでの大企業向けAI導入支援など幅広い実績を持つ。
AX取材企画について
弊社では、企業様のDX、AXの取り組みを紹介してまいります。
別媒体にも展開予定で、ウェビナー等でのご紹介も可能です。
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